玉造小劇店はお芝居を提供するお店です。
ラックシステム15周年記念公演第二弾 玉造小劇店配給芝居vol:2
作・演出 |
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わかぎゑふ |
出演 |
コング桑田 朝深大介 野田晋市 千田訓子 上田宏 谷川未佳 祖父江伸如 福井千夏 小末春奈 山下明里 わかぎゑふ
美津乃あわ |
三人:かんぱーい!
上田宏(以下、上):さて、始まりました。次回公演「お祝い」のHP企画として、朝深さんには色々聞かせて頂きたいと思います。今回で4回目の公演になります「お祝い」。フル出演で、しかも全て同じ役(島村優平)は朝深さんだけです。その辺はどう思われますか?
朝深大介(以下、朝):嫌やった・・・。
(爆笑)
上:それは何故?
朝:飽きた・・・。
(爆笑)
朝:もともと飽き性やし、芝居でもどんどん変えていく人やからな、俺は。せやけど、何べんも同じセリフ言うてんのに、台本も見たけど、完璧忘れてるな。しかもな、台本読んでて思い出したけど、たしか毎回、同じところでダメ出しされてんねん。
谷川未佳(以下、谷):へぇぇぇぇ。
上:それは、前の台本に書かれてたんですか?
朝:いや、台本とかは見てないねん。DVD見ぃへんしな。それは毎回、違う人とやるわけやから、皆と同じ位置から始めたいし、絶対見ないようにしてるねん。でも、稽古始まるやろ。ほんならふっこさんに同じ所でダメ出しされてんねん。ふっこさんに「それは、ちゃう!前言われへんかった?」って言われて、「あ、そうか!」って、そのダメ出しを思い出して役を作っていくことが出来るけどな。
上・谷:ははぁぁぁ。
谷:確かこのシーンで、ダメ出しされたみたいなことは、覚えてないんですか?
朝:それは、今考えることじゃないねん。ラックのお芝居って絶対に、深みがあるから、稽古が進んでいったら、ふっこさんもちゃんと説明してくれるやろ?それで公演になったらそれを忘れずにやっていくわけや。でも、公演終わって何年も経つと忘れてしまうやろ?
二人:はははは!
朝:まぁ一回言われたことやねんけど、また次やる時は、そんなに時間掛からんと思うわ。「そうか、そうやったな!」って気持ちが思い出していくから。
上:なるほど。
朝:逆にお前たちは、再演とかで同じ役やったことあるんか?
二人:えーっと、ないです。
朝:ほな俺の気持ちわからんな~。再演でも一年後の再演とかじゃない再演やから、初演から考えても、10年くらい経つわけやから、どんどん忘れて行くよ。だから今回で言うたら、芝居中での遊びとかはないわ。もう決まってることやから。よその人がやってるのも見たことがないし、もっと出来る人がやったら、もっと引出しがあるんやろうけど、例えば見本になる人とか、前に違う人がやってる資料があったら、「この人のやってる良いとこを取ったろう。」みたいなんはあるがな。俺の場合は、ヒントがなにもないねん!俺、お前らみたいに自分好きちゃうからな(笑)1回見ても忘れるし、見ないようにしてるからな。
上:そうですね、前やった自分自身を見て、ヒントを得ようとはしないですもんね~。
朝:ヒントも何も、その時にフルで考えてたことやってるわけやし、しかも今やったら10年たって、歳も取ったから、どっちか言うたらキレもなくなってると思うわ。優平はだって、25歳の役やで。
谷:初演の時、朝深さんは?
朝:32歳かな。今回、この役回ってくると思わへんかったもん。
上:もし今回、優平じゃなかったら何役やりたかったですか?
朝深:丁稚!めちゃめちゃ怖い丁稚!ガラス割ったりする丁稚。
(爆笑)
朝深:しかも、立場は一番下な(笑)
上:なるほど~。でも、遊びがないって言っても、今回もありそうですけどね。前回だったら、犬増やしたりしましたし。
朝:犬?何それ?
上:前、増やしてましたやん、犬。金持ちやから飼ってるっていう。
谷:それで宮崎さん(音響)、犬の声の音響増やしたんですよ。
朝深:(爆笑)そんなんあったか?忘れてるわ~。ほんなら次は鶏飼おか~?
二人:結局遊ぶんかいっ!
上:でもそんなスッパリ忘れるもんなんですか?
朝:もう、完璧忘れるよー。そらやっていくうちに繋がるで。繋がるけど、台本開けた時に、「マジで!めっちゃセリフ多いやん、これ~・・・。」言うて、でもこれは、みんなそうやねんけど、早くに台本貰ってるから、「覚えてきてくれよ。」ってことやし、急がなあかんやん。でもな、やっぱり稽古をようさんしたとこは覚えてるわ。すーっと流れていくところとか、遊びの部分なんかは全部忘れてるわ。
谷:あぁ~。何でなんですか?
朝:力入れんでええからや~。
二人:あぁぁぁぁ。
上:まぁ、今回陽介が僕なんで、毎回相手役が違うわけですが・・・やりにくかったとか・・・。
朝:全員やりにくかったで!
(爆笑)
上:あ、ほんまっすか?
朝:皆、下手やもん。
(爆笑)
朝:皆、陽介を引っ張っていかなあかんかったから。それはあったな。 まぁ、始めの中井なんかで言うたら、滑舌悪かったしな。 でも、俺が頑張ったから陽 介が出来たとかちゃうねん! あん時一番頑張ってたのは、訓子(今までの亜紀役は 千田訓子)がな、 かなり引っ張ってた、ずっと一緒になって手取り足取り教えてたから、 それでかなり助けてもうてたと思う。俺と一緒おってもしゃあないねん。この芝居でまず一番大切なんは、将来、陽介と亜紀が夫婦に見えないといけない。だから、初対面がすごい大事や。初めて会う時の新鮮な、その真っ白さがないとあかんねん。その色っていう、時の流れを出せるのはお前らしかないねん。これが一番大事やねん。生理用品の話とか色々あるけどな、生理用品をがんばってもしゃあないねん。そんなんは、丁稚に任せといたらええねん。はっきいり言うて。丁稚の台詞でいっぱいあるし。丁稚が必死になってる、必死にやればやるほど、陽介という人間が愛されてるのが見えるから、お前らがやらなあかん仕事は、まず真っ白からスタートして、熟年の夫婦になっていって、そこに子供がおるっていう図にならなあかんねん。それが出せるかどうかやねん。夫婦の役をやってるだけやったらあかんねん!ラックの芝居ってのはまず滲み出なあかんねん。滲むとか沁みるとかいう、言葉がすごい大事で、言葉で言うのは簡単やし、やるのはもっと難しいねんけど、それが出えへんかったらあかんねんな。だから、相手とすごい喧嘩せなあかんと思うねん。ま、こんなもんか?で、お前らがいっつもやってる芝居じゃあかんねん。沁みたり、滲み出たり、せん限り芝居はうまくならへん。そういうのがわかると、この芝居ってのがもっとやりやすくなる。理解力が高くなるから、向かう方向がわかるやろ?お互いやらなあかん仕事っていうのが。大事なセリフほど、サラッと言えってよう言われるやろ?ふっこさんの言う、それはでけへんやつのダメ出しやねん。その方が沁みたりすんねん。大阪芝居やないねんからな。
(爆笑)
だから、自分の話に戻るんやけど、沁みたり、滲み出たりってのを忘れてるから、またダメ出しされて、「そうか!」ってなって、その人間に近づいていく、だから時間はかからんわけや。優平なんかで言うたら、一番やらなあかん事は、悪人じゃないこと。人が傷ついたりしてるのを気ぃついてないねん。だから最初、罪を感じてなくて、最後に罪がわかる人やねん。
上・谷:あぁ~なるほど。
朝:だから、登美子姉ちゃんセリフで、「おっそいなぁ!」って言われて怒られるんやけど、「ちょっと遅れただけやないかぁ~!」言うて、反省してないねん。軽くてな、相手に物凄い失礼なことしてんねん。あれを、罪に感じてる人やったら、「ごめん!ちょっと遅くなってな。」っていう言い方になる。軽く捉えろって言われてるから、細かいねんけど、それが役の幅であったりとか、滲むってことにつながってくるねん。「わかりました」っていう台詞あったとしたら、「わかりました。」っていうのと、「わぁーた」って言うのとでは全然違うやろ?それが演技や。はっきり喋れなあかん事が、芝居ではないねんな。流して言うとこもあんねん。ただそれを確信犯で持って、頭通して、俯瞰して、演じないといけないのが芝居や。・・・・・なんで、こんな演劇論語ってるねん!
(爆笑)
上:稽古前にめちゃくちゃええ話聞いてしまいましたけども。
朝:薄っぺらい芝居する奴ってのは、一生懸命するやろ?だから、それは優平ではないねん。頭でしなあかん芝居と、胸(心)でせなあかん芝居、2つあるねんな。。頭で芝居するってのは、形上のことや。優平や亜紀は胸で芝居せなあかんねん。それで、確信犯でせなあかん。だからすごい時間かかる。訓子にも聞いたらいいわ。きっと同じこと言うと思うから。何やったら、俺登美子姉ちゃんやりたかったわ。
上:それやったら、「中井のおばちゃん」になりますやん!
朝:でも晶さん役はあかんねん。あれはホモやろ?ホモはでけへん。中畠華喬(「おたのしみ」に出てきたキャラ)が限界やわ。俺がやると、芝居ならへん。コントになるから。
上:その境界線はめちくちゃ難しいですね~。
朝:難しいよ~。でも長年やってきたら、自分でわかるから。だから今度するのは、芝居モードやからギャグなしやわ。ほんで、お客さんを泣かそうと思ったらあかんしな。それを思ったら、終わりや。辛いやろなって思わせる芝居ってのは、それをやるのは新劇とか新派の話で、そうじゃない新しいジャンルなわけや、小劇場は。ふっこさんは泣きたいときは泣けっていうやん。自然に泣けるって言うのは、自分の心に落ちてるってことやからな。お前が(上田に)大変なんは最初妹が死んだとき、ほんまに泣けるかどうかや。今までの皆は泣いてたからな。でも、そこに至ってからダメ出しが来るから。形か形じゃないかって事がどういうことかってことがわからなあかん。いくら泣いてても形が悪かったら直さなあかんからな。だからそこは頭でも芝居せなあかんわけや。だからほんまにしんどいねん。瞬発力がいるねん。しかも、セリフも聞かせなあかんから技術もいるやろ?だから、次の稽古場はそれとの戦いやな!
上:いやぁ、もう十分な量をしゃべっていただきましたけども。
朝:いや、大事なことやからな。ミカも大変や。所作をちゃんとせなあかんからな。現代芝居じゃないから、徹底的に着物所作が必要や。座り方、立ち方とか、あれ見てみ。(レトロなキリンビールのポスターを指して)この色とか、この具合、レトロな雰囲気を出さなあかん。こういう芝居は、時が過ぎれば過ぎるほど、難しくなってくる。その地方の方言を喋る人も少なくなってくるしな。日本語に聞こえへんセリフはいっぱいあるからな。例えば、花組芝居さんあるやん。昔のもんを現代版にして、それを演劇にしてるわけや。たぶんそんなことできるのは、日本全国探しても、あの劇団だけや!これは載せとけ!
二人:(大爆笑)
上:今、良いこと言いました!
朝:俺はようせんわ。あれは、凄いで!技術がいるからな。
上:もう、ほんまにだいぶ喋っていただきましたけど、「お祝い」のおもしろエピソードなんかあります?
朝:そうやな~、ずっと怒ってばっかりやったらな~。
上:いっぱい怒ってたんですね・・・。
朝:もともとの一回目のことを言うとな、陽介の最初の候補は、俺やってん。
上・谷:ほほぉ~。
朝:よう見たらわかるんやけど、登場人物の中に、出演者の名前一文字入ってるねん。陽介の介は、俺の大介の介やろ?優平の優は、はっしんの(橋田雄一郎さん)雄を取ってるねん。亜紀はいくねぇ(生田朗子さん)のあきや。
上・谷:なるほど~。
上:でもそれは、実際は変わったわけですね?
朝:そうや。ほんで、はじめ陽介と亜紀を俺といくねぇで読んだ時、きっと二人ともそうやったと思うねんけど、全く手ごたえなかってん!
上・谷:へぇぇぇぇぇ。
朝:あぁいう役嫌いやから(笑)
(爆笑)
朝:あんな明るい、白い役って言うのは、今でもできへん。
(爆笑)
朝:自分に白っていうモードがないねん。その代り黒はとことんまで出来るけどな。俺がやると嘘くさいのよ。ほんで、中井になったんやけど、中井はそれまで主役とかやったことなかってん。脇役ばっかりやったから。ほんで、ふっこさんが最後な読んでみ言うて、中井が「読ませてもらえるなら。」って読んだ時にやなぁ、必死やってん!ほんで訓子も主役やったことなかってんけどな、読んだときやっぱり、よかってん!そん時とにかく二人ともな、真っ白やった!それはみんな思ったと思う。ふっこさんも、出来るやん!ってなったんやろな。ほんで空気も変わったしな。
上・谷:へぇぇぇぇぇぇぇ!
上:それは凄いですね。
朝:凄かったよ。ほんで、みんなも思ったと思うけど、二人の方がええと思ったしな。上のメンバーが全員あかんかって、ほんで、キャストがよいしょって、ずれたんや。
谷:ずれてはまったんですね!
朝:ずれてハマった!新鮮味もあったし。ほんで、ふっこさん言うてたけど、陽介は下手やったらええねん!
上:あれっ?・・・・あぁ~そうなんだ。
谷:あ、そっちですか・・・。
朝:いらんこと考えんと、真っ白やったらええねん。自分の演劇の経験知なんか無視や。米吉(桂米吉さん)も主役も舞台も初めてやったし、憲章(吉田憲章さん)も劇団入りたてやったし、皆、真っ白や!
上:大丈夫か?俺!
朝:お前世間知らずやろ?社会性ないけど・・・陽介にあてはまるとこはそこやな。プロジェクトXやねん、この話は!
上・谷:なるほどぉぉ!
朝:中井はふっこさんの言うこと全部聞いてたからな、カリアゲもちゃんとして、七三にわけるのも、ビッチーィィィ!って分けてたしな。ジェル代めっちゃかかったんちゃうか?あん時はみんな、床屋に行ってたしな。
上:へぇぇぇぇ。いや、もう十分に喋っていただきましたね~。
朝:まだ喋り足らんけどな~!
上・谷:ひえぇぇぇぇ!
と、この後も朝深さんの話は止まりませんでした!朝深さんは最後にこんなカッコイイ一言をおっしゃられました。
「この芝居、沁みて下さい。 「沁みる」それが、ラックに相応しい言葉や。」
と・・・。
様いかがだったでしょうか?ほとんど、朝深さんの独壇場でしたが、聞いてる僕らも楽しませながら、怒りながら話してくれるよき先輩でございます!芝居に熱い男、朝深大介!今回4回目の沁みる島村優平役!ぜひご覧ください!